ごきげんよう、凩です。
最近はSNS名の「トレニア」の名前の方をよく使っているかもです。
今年2月の記事ですが、当時から気にはしていたのでここで挙げます。
名古屋市立中学校で非常勤講師をしていた男性が、ホストクラブの客引き行為で逮捕された件について。
ヤフーニュースなので消されるかもしれませんが、リンクを張ります。
前提として、記事にもありますが、
非常勤講師は副業自体は許されており、業種も制限はありません。
常勤講師、本務教諭は、教育に関する副業なら許されることがあります(とはいってもなかなかそんな時間はありませんが)。
この先生の問題は、「客引き」行為が違法であるにもかかわらずやっていたということ。
夜のお店の客引きなどについてあまり詳しくはないので、ここでは軽くいきます。通りかかる人に入店を促すような言動をするとアウトなのかな。
彼の逮捕に至ったのは、警邏中の私服警官に声をかけてしまったこと。
ニュースによれば検察庁への送致もされています。有罪となるでしょう。
また、身柄を拘束された状態なので当然仕事に行くこともできず、公務員の定めによれば起訴されない限り懲戒免職対象とはならないですが、信用失墜行為や「非行」と見なされれば起訴を待たずに彼は首です。最近はとても厳しいですから。
客引きという違法行為をした彼のことを擁護するつもりはありません。
しかし、ここで次なる不幸が起きないように私が主張したいのは、「非正規の教員に対する待遇の悪さ」を是正してほしい、ということです。
彼がなぜ副業をしているのか、その理由は長年非常勤講師をしてきた私にはとても分かります。
公立学校のことはよくわかりませんが、そもそも非常勤講師とは非正規の教員であり、アルバイトと同じように時間給(コマ給)で働く先生のことです。塾講師アルバイトがわかりやすいかもしれません。よって、毎朝8時くらいに出勤して17時まで職員室にいる、という働き方ではなく、自分の授業がある時間の少し前に来て、授業が終わったら帰って良しなのです。掃除や給食の指導、部活動の顧問や担任の仕事をする必要はありません(ほかに契約があればすることがあります)。
おそらく世間の感覚では、例えば定年退職した教員が年金をもらうまでの期間働くとか、教員採用試験に合格するための準備期間として働いているとか、そういう理由で非常勤講師をやっている先生が多いと思われます。
前者は割といます。
しかし問題は後者です。この先生もおそらくこの部類です。
非常勤講師はそもそも契約期間が1年ごとの更新制で、3年が連続勤務のマックスです。
よって、3年たったら契約更新はなく、わかりやすく言うと「クビ」です。
ではその3年後までに正規採用にうまく移行できるかというと、そううまくいきません。
「順番に採用されていく」なんて話も聞いたことがありますが、そんなわけありません。結局教育力や個人としての能力が高い先生の方から順番に採用されていきます。長年のキャリアを積んだベテランの非常勤講師を差し置いて、教育実習すらまだやっていない大学4年生がストレートに合格することもあります。
教員採用試験の受験会場に並ぶ受験生の顔ぶれを見ると、よくわかりますよ。
40代以上、とても「若者」とは呼べないご年齢の方も、20代前半のリクルートスーツが初々しい大学生に混じって多く並んでいます。
おそらくほかの業界でこんな光景は見ないと思います(これは、教員採用試験の年齢制限が60歳くらいに設定されているからというのもありますが)。
話がそれましたが、つまり非常勤講師は安定した職業ではないということです。
例えば1年間は保障されているが、3年後はわからない。
必死に採用試験の準備を進めても、大学生に若さとポテンシャルで追い抜かれてしまう。
そうやって学校を転々としていき、ただ履歴書の行数が増えていくだけ。
そして、非常勤講師には年齢による昇給もない。新卒もおじいちゃん先生も同じ時給です。
だから、私の経験と計算上では、30代前半くらいまでは非常勤講師をやっても本務教諭よりもらえるかもしれませんが、それ以降は負け続きになります。退職金も出ない。
そりゃ将来が不安になりますよ。
自分に自信も持てなくなる。モテるわけがない。
中年の男性教員の多くは未婚です。
だから、ある程度将来に絶望した(数年で正規採用されるだろうという淡い人生設計が難しいことを察した)先生はどうするかというと、副業を考える。
私が知っている非常勤講師の中には、大学で教員志望の学生向けの講義をしている方、夜には塾講師をしている方、実家のスーパーでバイトをしている方がいました。
そして、彼の場合は夜の飲食店だったわけです。
これの理由も納得がいきます。
授業は日中にあるから、夜にできる副業を探すのも自然です。
夜の仕事なら、客も従業員も18歳以上であり、生徒に出くわすこともない。
彼の場合は、違法行為をしていたことがよくなかったですが。
教員としてのコミュ力を活かしたホストか、ドライバーなら行けたかもしれません。
といっても、睡眠時間を削られたり二日酔いの状態で「本業」に向かわないといけないのは本末転倒ですが。
いろいろ書きましたが、要するに非常勤講師の身分が不安すぎるから副業をして将来に備えるのです。
これについては、非常勤講師よりも「常勤講師」の方が深刻です。
常勤講師と書くと、業界の方以外は「本務教諭(正規の教員)」のことと思われるでしょうが、
常勤講師は非正規です。1年間契約です。
しかも、常勤講師は法によって副業ができません(教育に関わることはできますが、そもそもそんな時間はありません)。
だから、非常勤講師以上に不安であり、それに対する金銭的な対策をすることもできない。
だから、めちゃくちゃ不安な仕事です。
常勤講師はその経験から、正規採用につながりやすい立ち位置にいるとは思いますが、
世間は甘くありません。
私はある学校法人(私立学校)で、常勤講師から非常勤に契約を更新され、とうとう正規採用されなかった先生を知っています。あるスポーツの指導もできて、生徒との関わり方に問題を感じるような様子もありませんでした。
それが、法人の財政的な理由や、本校OBにもっとタイムリーな教員志望者がいたか、公募で受験してきた受験生にもっと若くて高学歴な人がいた、くらいの理由でそちらが優先されていくということです。
結局学歴か、部活動か、教育力です。
学校との縁や、それまでの努力や蓄積、貢献度の高さが採用につながるわけでは、ないようです。
学校も少しでも優秀な教員が欲しいのはわかります。
でも、その非正規教員を採用したのも学校です。
どうか、優秀な頭脳を持った人たちを薄給で使い捨てにする採用文化をやめにしませんか。
人生に絶望した教員が、生徒に将来への希望を持たせられるわけがありません。そういう先生を誰が作ったのですか。