凩です。
東京大学の教育学者、本田由紀さんの著書。3.11の前後に執筆されています。
本書は、戦後の伝統的な日本社会と、それが崩れている現在の社会を比較して、教育政策の在り方を考察しています。
教育行政です。
現在は「ハイパー・メリトクラシー」(メリトクラシーは実力主義という意味)と言うべく、諸知識・技能よりも、もっと広く評価しづらいコミュニケーション能力や課題解決能力などに重きが置かれた社会です。
この能力はその人の人格にも関連するものなので、全体的な成長をしなければ得られないこと、
そして、それが「低い」という評価は、その人の人格を否定しかねないことになるということ
などの難しさがあり、
なかなか大変な時代に入ってきています。
そんな中で、非正社員が増加傾向にあり、正社員になれないことに絶望する学生も少なくありません。
(これ自体は、その学生の「能力が低い」からではなく、社会が従来の在り方を維持できなくなった結果にすぎません)
ここで皮肉なのは、必死で生計を立てている非正社員の方が実は身分にふんぞり返る正社員より
能力がある場合もあるってこと。
負け惜しみじゃないぞ。
ただ、そんな低賃金の非正社員やボランティアが、経費節減のために都合よく使われているというのも事実。
放課後の児童保育は本当に社会や親が満足しうる質を達成しているのか?
そして、それらはすべて、広がりつつある格差をさらに拡大しているのではあるまいか?
さて、途中から一部私見も入り込んだようですが、
さすが社会学者、「アポリア」「メリトクラシー」などの難しい横文字を難なく用いながら
社会構造に斬ってかかる姿勢は尊敬です。
家庭内の男女役割分担派が増えたという逆説的な事実についてもデータを交え解説する一冊。
母親なしでは語れない教育の在り方を考えてはみませんか?

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